消費者金融大手アイフルの違法取り立て問題で、多重債務問題が改めて注目されている。政府・与党はその大きな原因とされる高金利を是正する検討に入っているが、「金利を下げれば貸金業者は簡単にお金を貸せなくなり、ヤミ金融がはびこる」との指摘もある。業界代表と多重債務問題に詳しい弁護士に聞いた。(題字は書家・貞政少登氏)
◇ヤミ金横行で逆効果 現行金利は高くない--全国貸金業協会連合会会長・小倉利夫氏
出資法の上限金利(29・2%)が高すぎるという議論があるが、消費者金融では借り手が返済不能となる比率が高く、それに備えた貸し倒れ引当金などが不可欠。金利にはその分も含まれている。上限金利を下げればその分、消費者金融会社はリスクをとれなくなり、お金を借りられなくなる人が増える。
商工ローンが社会問題化し、00年に上限金利が40・004%から今の水準に引き下げられた結果、ヤミ金融が非常に増えた。上限金利が下がれば下がるほど、ヤミ金がビジネスになる。29・2%は小口で短期の場合は決して高くない。10万円を1カ月借りても利息は2400円だ。
問題は金利の高低ではなく、多重債務者を出さないためにどうするかだ。そのためには参入規制を厳格化していく必要がある。貸金業の登録業者のうち協会への加盟率は45・8%。(顧客の信用情報をやり取りする)情報センターの加入率は15・1%しかない。協会では、法令順守について業者の研修に力を入れており、加盟業者では多重債務者問題はほとんどない。問題を起こしているのは、その他の業者だ。貸金業として登録する業者には協会や情報センターへの加盟を義務付け、ヤミ金のような業者をどんどん取り締まるべきだ。
借りる方に金利への意識がない人が多く、業者の説明が足りない面もある。毎月の返済額をきちんと説明すれば、過剰貸し付けはある程度防げる。それでも多重債務者が出てしまったら、その支援策も考えている。われわれはさまざまな努力をしているが、違法取り立てなどが発覚したアイフルのような問題が出るとすべてが水の泡になる。業界の代表的企業だから弁明のしようがなく、業界にとっては影響が大きい。
上限金利が利息制限法(15~20%)に一本化されたら、中小業者は貸し倒れのコストなどを吸収し切れず、1割生き残れるかどうかだ。大手でもやっていけない。消費者金融は2200万人が利用し、そのうち多重債務者は5%だ。上限金利を引き下げれば、残る95%にヤミ金に走らざるを得なくなる人が出てくるなど影響が及ぶ。国で面倒を見ればいいという人がいるが、そんな財政状況ではない。【構成・平地修】
◇問題の根源は高金利 下げれば利用者増も--東京市民法律事務所弁護士・宇都宮健児氏
消費者金融を利用している2200万人のうち150万~200万人が多重債務者とされる。厳しい取り立てで夜逃げする人が後を絶たず、生活苦から自殺する人が交通事故死より多い年間8000人規模に達するなど事態は深刻だ。
問題の根源には高金利がある。利息制限法(上限金利15~20%)に違反しながら、出資法(上限金利29・2%)の枠内にとどめる「グレーゾーン(灰色)金利」が横行している。低利で資金を調達できる今は貸せば貸すほどもうかるから、社員にノルマを課して貸し出しを増やす。そうなるとずさんな融資が増え、強引に回収しようと「アイフル」のような問題が起きる。
消費者金融の平均的な利用者は約145万円を3・3社から借り、6年半かけて返している。完済には1カ月に6万円以上必要だ。年収500万円以上ないと、そんな余力はない。
利用した家庭や中小零細企業が破たんするような暴利は厳しく規制すべきだ。灰色金利は最高裁の判決で実質的に否定されており、利息制限法を超える金利に罰則を科したり、出資法の上限金利を利息制限法並みに引き下げる措置が必要だ。返済能力を超えた過剰な貸し出しに対する規制も強化すべきだ。
そうすると審査が厳しくなり、借りられなくなった低所得者がヤミ金融に走るという指摘もあるが、説得力はない。過去には金利が下がると、利用者は増えている。そもそもヤミ金融に手を付けるのは、大手の消費者金融などから高利で借りて返済できず、返済資金を確保するためだ。
信用リスクの高い人に高金利を課すのは当然との指摘がある。経済理論では通じるかもしれないが生身の人間を考えていない。低所得者ほど低金利でないと生活を維持できないからだ。
日本では銀行が高金利の消費者金融大手と提携し多重債務問題の片棒を担いでいるが、フランスやドイツでは銀行が日本より低い金利の消費者金融を手掛け、返済に行き詰まっても債務整理などを行う公共機関がある。生活に困った低所得者は、自治体の低利融資といったセーフティーネットや社会保障で対応すべきだ。「低所得者は高利貸しに世話をさせろ」というなら、政府はいらない。【構成・山本明彦】
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■人物略歴
◇おぐら・としお
埼玉県川口市の貸金業「三信産業倉庫」社長。99年から全国貸金業協会連合会会長。74歳。
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■人物略歴
◇うつのみや・けんじ
東大中退、71年弁護士登録。全国クレジット・サラ金問題対策協議会事務局次長。59歳。
毎日新聞 2006年5月22日 東京朝刊