◇借金整理の相談、低利融資
「生協の共同購入の代金を集金に行ったら、誰もいなかった」--。夜逃げ同然で引っ越し、連絡がとれない生協組合員が増えているという。中には多重債務に陥っている組合員もいるとみられる。生協は「安全な食材の共同購入」「環境問題」などに取り組んでいるが、代金は後払いシステムのため、未集金は存続にかかわる。組合員が多重債務者にならないための相談などに乗り出した。【遠藤和行】
生活サポート生協のスタートに向けて準備する関係者=東京都世田谷区で 組合員が多重債務者にならないための支援組織として発足を準備しているのが「生活サポート生協・東京」だ。都内にある「生活クラブ生協・東京」と「パルシステム生協連合会」の関係者や司法書士、学者らが発起人となり、全く新たな生協法人としての手続きを進めている。
サポート生協は食材などの共同購入は行わない。多重債務者となった組合員や多重債務に陥りそうな組合員からの相談に乗り、相続など暮らしにかかわる金銭問題の悩みなどを受け付けることが事業の中心。特に多重債務にからんでは、借金整理法についてアドバイスすることにしている。
「借金とは」「金利規制に関する二つの法律とグレーゾーン金利」といったテーマの講座やセミナーも企画する予定だ。さらに、一度は多重債務者となったものの、借金を清算することができた組合員を地域のアドバイザーとして養成。自身の経験をもとに、多重債務者にならないためのアドバイスをしてもらうことにしている。
サポート生協作りに奔走した生活クラブ生協・東京の村上彰一専務理事は「ここ3、4年、購入代金を払えない組合員が増えている。多重債務に悩む組合員もおり、生協として何もしないわけにはいかない」と話す。
入会条件は、都内在住か在勤で、組合員であるかどうかにかかわらず、組合加入出資金(5000円)を支払えば組合員になることができる。
□ ■ □
生協では、資金面での支援も行うことにしている。多重債務者となった組合員に対して低利で融資する「有限責任中間法人・生活サポート基金」が発足。東京都に貸金業として既に登録されており、年利は12・5%。自己破産をせずに生活再建ができそうな組合員など、融資対象者は審査して判断する。また、単なる融資ではなく、再度、多重債務者とならないよう、家計のアドバイスを継続して行う。こうした取り組みは、既に「岩手信用生協」が行っている。
基金総額は5億円を目指しており、組合員だけでなく1口10万円の出資者を募っている。
◇問題は過剰貸し付け、業者が抑制を--金融担当大臣政務官・後藤田正純氏
後藤田正純氏=小出洋平写す 金融庁は昨年、貸金業のあり方について検討する懇談会を設置。金融庁代表の立場で懇談会に出席する金融担当大臣政務官、後藤田正純衆院議員に、多重債務問題の現状などについて聞いた。【聞き手・遠藤和行】
消費者金融などからの借金を原因とする自己破産者は年間約20万人、負債など経済的理由の自殺者も年間約8000人に上ります。貯蓄のない家庭が二十数%あるというデータもあり、多重債務は深刻な問題です。
高金利と返済能力を超えた過剰貸し付けがセットになって問題を引き起こしています。借り手はお金のない弱い立場なので、業者が、ある程度の抑制をしなければなりません。貸金業規制法には「過剰貸付の禁止」(13条)が盛り込まれています。貸付額も「年収の1割、もしくは50万円まで」とするガイドラインがありますが法的拘束力はありません。
利息制限法と出資法の二つの法律があるために生じる「グレーゾーン金利」は好ましくありません。両法律の「溝」が埋まらない場合は、内閣府令やガイドラインを改正し、業界に自主規制してもらうこともありえます。年利20%以上の金利は借り手が自らの意思で支払う場合に限って、例外的に認められる金利です。業者も、貸し付けの際には「返済総額は○○円となります。少しでも早く返しましょう」などと具体的に話すべきでしょう。
「高金利の借金は多重債務に陥りやすい」といったことを学校や職場などで伝えていくことは非常に重要です。個人的には、内閣府が中心となって、多重債務問題の省庁連絡会議を作るべきだと考えます。
毎日新聞 2006年5月20日 東京朝刊
