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ストップ!!多重債務:/中 社会に出る前の若者に、「お金の大事さ」など重点講義

実際の相談例を紹介する土屋所長の話に生徒たちは聴き入った=野沢南高校で ◇「お金の大事さ」「借金の利息」重点講義

 卒業式を9日後に控えた2月末、長野県佐久市の県立野沢南高校体育館に集まった210人(3年)が、真剣な表情で安易な借金、多重債務の怖さを語る講師の話に聴き入っていた。同県は全国の自治体でも珍しい「県多重債務問題研究会」を組織し、多重債務の相談にも応じている。この日開かれたのは、研究会が行っている高校生ら若年層を対象にした「金銭教育」の講座だった。【遠藤和行、写真も】

 高校生が最初に見たのが、無計画な借金の怖さを警告する啓発ビデオ。《若い女性がクレジットカードで行き当たりばったりに洋服などを買い続ける。しばらくして、カードの限度額を超えて使えなくなる。だが、女性は消費者金融から借金して買い物を続け、借金が膨らんでいく……》

 上映後、研究会のメンバーでもある県上田消費生活センターの土屋公男所長が、相談例を紹介。「先日も40代の女性が相談に来た。『夫が借金を苦に自殺した。借金だけ残ったが、子どもも小さいしどうしたらいいのか』という悲惨なケースでした」。生々しい実例に生徒だけでなく、教師も引き込まれていった。

 業者の話にも触れ、「消費者金融などの貸金業者は、法律で必要以上の借り入れを勧めてはならないことになっている。しかし、業者は『30万円の限度額まで借りられますよ』などと誘うことがある」と注意を促した。

 一緒に講座を聴いていた学年主任の吉田茂哲教諭は「生徒たちは自分とカードなどによる借金トラブルは無関係だと思っていたようだが、自分にも起こりかねない身近な問題だと感じたようだ」と話していた。

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 長野県では、違法に高い金利で貸し付けるヤミ金融業者の被害が多発したため、02年にヤミ金被害者のための救済組織を設置。ヤミ金問題と多重債務者問題が関係しているケースが多いことから、県多重債務問題研究会を04年に設置した。

 研究会には弁護士会、司法書士会、貸金業協会などが加わり、多重債務者の相談に応じている。県は昨年5月、高校校長らあてに「金融教育の推進について」と題した文書を出し、金銭教育の重要性を訴えた。こうした金銭教育は、各地で広がりつつある。

 消費生活センターの相談員1700人で作る社団法人「全国消費生活相談員協会」の会員による、多重債務に陥ることの怖さを伝える講座は、これまで高齢者を対象としていた。しかし、高校生や大学生らのための講座も05年度から始めた。昨年は1400ある消費生活センターのうち100カ所で実施し、高校生6000人、大学生1000人、中高生の保護者1100人が受講した。

 若者向け講座のテーマは「契約」「クレジット」「借金の利息」など。特に社会に出る前の若者のためには「お金の大事さ」「借金」「多重債務」「保証人となることの怖さ」に重点を置いている。

 講師経験のある同協会の丹野美絵子さんは「今、若者向けの講義で多重債務の問題は欠かせない。教育現場で金銭のことがようやく取り上げられるようになった。金銭トラブルに巻き込まれないためには、社会に出る前にしっかりお金についての知識を身につけておくことが必要」と話す。

 ◇学校で系統立った教育を--西村隆男・横浜国大教授(消費者政策)

 金銭管理が非常に難しい時代。今までは、財布から現金が減るのを見ながら金銭を管理することができた。しかし、携帯電話を使い、現金を持たずに買い物ができるようになるなど、「キャッシュレス」が急速に普及している。国内のクレジットカードショッピングの貸付総額は、ここ数年、年間2兆円ずつ増えている。

 消費者金融もコマーシャルを流し、借り手の返済能力を超える「過剰融資」を行っている。金利が高く、減少傾向にあるとはいえ、年間20万人が自己破産し、消費者金融を利用する層も拡大している。

 一方、家計管理を身につけるための学校教育はお寒い状況だ。高校の家庭科の教科書にクレジットカードの仕組みや、自己破産の増加などが掲載されるようになった。しかし、授業では「家庭経済」「家計管理」はさらっと触れるだけのことが多い。

 高校卒業後に、クレジットカードや、家計管理、契約などの問題を学ぶ機会はほとんどない。学校教育で小学、中学、高校と、系統的に金銭教育を行う必要がある。自己管理できる能力を付けさせることが、社会のセーフティーネットとして不可欠だ。

毎日新聞 2006年5月19日 東京朝刊


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